研究概要 |
高分子物理の分野で提案されている電場応力拡散結合理論に基づき,イオン導電性高分子アクチュエータの応力緩和挙動を含んだ線形システムモデルを構築した.モデルは物理パラメータを含んだ線形状態方程式で表現されており,例えばサイズや材料定数,イオン種などを変えたときのアクチュエータの応答をシミュレーションによって再現できる.現状では定電圧下で顕著となる界面応力の効果は考慮されていないが,とくにイオン半径が小さなナトリウムイオンとイオン半径の大きなTEAイオンとの緩和応答挙動の違いを再現できることをシミュレーションと実験により確認した.そのため,今後モデルベースのアクチュエータ設計や制御系設計が可能なモデルであると予想される。すなわち,試行錯誤やブラックボックスのシステム同定を行うことなく,既知の物理定数と若干のパラメータ推定だけで,アクチュエータの応答を予測した試作や,制御則の導出ができると期待される.なお,電気系のインピーダンスについても実験データが分布系に特徴的な応答を示すことから,界面の電極分布に基づいた検討を加えている.さらに,イオン導電性高分子はセンサとしての機能ももつため,そのセンサ応答機構のモデリングについても検討を行った.電流発生をシンプルなモデルで説明することができ,また電圧応答が電気インピーダンスに直接関連付けられることが明らかになった.さらに実験によりイオン種による周波数応答の違いを調べ,センサの基礎的なモデルを実験的に検討した.
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