研究概要 |
イオン導電性高分子アクチュエータについて, 高分子物理の分野で提案された電場応力拡散結合理論に基づいたモデルを導出し, それを拡張している. モデルは応力緩和挙動を再現することができ, 線形の状態方程式で記述されている. 特に本年度は, 電気機械変換系において, 考慮されていなかった境界条件を評価することにより, アクチュエータの機械的な変形量が電気機械変換系にフィードバックされ影響を受けることを明らかにした. これは, 入出力データだけからモデルを構築するブラックボックスモデリングからは導出されない結果であり, 新しい知見といえる. このような詳細なモデル化を進めることにより, 今後アクチュエータの動作原理の理解と, より高精度なシミュレーションや, モデルベースの制御系設計が可能になると期待される. また, 電気機械変換系に加えて, 電気系すなわち電気インピーダンスの原理を明らかにするため, その分布系モデリングを行った. インピーダンスの周波数応答は, 位相が-45度付近にあり, 低次の伝達関数(微分方程式) では記述できないため, モデルが偏微分方程式で表されることが予想される. そこで, フラクタル様にポリマー界面に存在する電極をモデル化した. これを一般化すると伝送路と同様の分布回路モデルが得られ, 得られた偏微分方程式を解析のために離散化した. 混合型有限要素法に基づく分布ハミルトン系離散化により, 集中定数のRCラダー回路として表現し, 低次元化した回路の素子値を決定した.
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