研究概要 |
本年度はまず,申請課題に関する検討を進める上で必要不可欠となる頭部伝達関数(以下「HRTF」)の実データを得るため、測定実験系を構成して測定実験を実施した。測定対象はダミーヘッドおよび実際の人間被験者3名とし、民間企業のレンタル無響室を借用して実験した。測定の分解能については、正中面を基準にして方位角方向に左右±90度を5度刻みで、仰角については水平面、-15度、-30度の3通りとした。本課題では、HRTFをどのようにモデル化するかによって次年度以降で検討すべき伝達関数チューニングの方法が複数想定されるため、後のモデル化手法の変更に対応できるよう同定に利用する入出力信号をマイクロフォンを用いて実際に採取し、WAVファイルとして記録、その上で頭部伝達関数の数式モデルの同定を行うこととした。本年度はまず相関関数に基づく周波数領域での解析を行い、測定対象1つに対して111個のゲイン・位相特性を計算,それを逆フーリエ解析することで得られるインパルス応答信号群を,対応する者に対するHRTFデータベースとした。次いで、このデータベースに含まれるインパルス応答信号を音信号に畳み込むことで空間内の特定方位角・仰角を存在位置とする仮想音源を構成し、頭部伝達関数測定実験の被験者と同一の者に提示して音像定位誤差を測定した。以上の結果を踏まえた頭部伝達関数補正の初歩的な試みとして、提示音に対する回答のずれの値を用いてインパルス応答信号を補間補正する簡易なアルゴリズムを構成し、音像定位実験を行うことでその効果を検証した。
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