高電圧を用いた電気機器・電力機器においては、近年コンパクト化が強く求められており、そのためには、機器内部に印加される電界が局所的に強調されないような設計上の工夫が必要となる。このように電界分布をできるだけ均一化するための絶縁材料として、傾斜機能材料の適用可能性を検討してきた。特に、本研究課題においては、電界分布を均一化可能な誘電率傾斜を与える手法として遠心力印加を適用し、エポキシ内部に充填される粒子材を遠心力印加によって空間的に偏在化させる手法を用いて、誘電率傾斜を実現した。今年度は、電極と絶縁材料の界面における電界を低減し、長期劣化寿命を延伸することが可能な傾斜機能材料として、誘電率をU字に分布させる材料の作製を行ってきた。単純に遠心力を印加するのみでは、誘電率傾斜は一方向にのみ実現でき、中心部に凹形の分布を有する誘電率傾斜を実現することは難しい。そこで、あらかじめ異なる誘電率を有する2層のサンプルを注型し、これに遠心力を加えることで、U字のような複雑な分布の誘電率が実現できることが実験的に確認できた。2層サンプルそれぞれの充填材の粒子サイズやその充填率、さらには温度、遠心力の付加時間や付加力を種々変化させることによって、様々な誘電率分布を有する傾斜機能材料が実現可能であることが確かめられた。またこれらの作製実験の再現性も確認し、作製にあたって上記のパラメータをコントロールすることで、所望の分布を有する傾斜機能材料の実現が可能であることが確かめられた。
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