研究概要 |
電気エネルギーシステムにおける系統制御の一方法として, 広域位相計測を利用した電力系統安定化装置(PSS : Power System Stabilizer)の適応的な調整による系統広域安定化方法を検討した。平成20年度における検討項目と得られた成果を以下にまとめる。 1. 広域位相計測に基づく制御系調整手法における簡略動揺モデルの高精度化 位相計測データを利用した系統安定化装置調整による系統安定化制御方式において, 観測量に基づいて構成される低次簡略動揺モデルの精度向上を図るため, モデル表現の改善を検討した。従来の電圧位相情報に加えて新たに電圧情報を含むモデル構成を考案し, これまで考慮されていなかった発電機磁束に関する状態の不安定化を防止しつつ, 支配動揺モードを効果的に安定化する方策を検討した。小規模電力システムを対象とした系統シミュレーションによる解析で良好な結果が得られることを確認した。 2. 低次電力系統モデル同定に基づく制御系設計方法の高度化 より柔軟な制御系設計を実現するため, 位相計測データを利用した低次電力系統モデルの構成方法を検討した。安定化制御系が電力系統に与える効果を表現するモデルを同定し, 設計対象となる制御系を含む制御ループを構成する方法を考案した。この方法では, 詳細な電力システムの情報は必要なく, 複数地点の電圧位相情報を利用して電力システムの特性を表現している。これらを伝達関数で表すことで種々の制御系定数の調整を容易かつ効果的に行う方策を検討した。設計を容易に実施可能なボード線図による調整を試みた結果, その効果を確認することができた。
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