| 研究概要 |
同期機は,発電所におけるほぼ唯一の電力発生源であるとともに,工場・社会インフラ・家庭などにおいてあらゆる用途に使われる電動動力源であり,きわめて重要な機器である。同期機の塊状鉄心磁極の設計においては,表面損による磁極の過熱の有無と,表面損による効率低下量を予測することが重要である。このためには,表面損を精度良く計算できることが必要である。しかし,現状の表面損の計算方法は計算精度が不十分である。このため,表面損の物理現象を把握すると共に,高精度計算方法を確立することが望まれている。これが実現すれば,同期機の効率向上・設計期間短縮・磁極過熱防止・構造改善に寄与できる。
そこで当該研究では,基礎的検討として磁極と同一材料の塊状鉄心リング試料を対象にして,表面損の物理現象把握と計算精度向上方案の探索を進めている。当該年度に実施した項目は次の通りである。(1)塊状鉄心リング試料を設計・製作した。また,該リング試料と同一ロットの材料で角捧試料を製作した。(2)直流磁束に交流磁束が重畳した条件でリング試料を測定する設備を構築し,表面損を測定した。(3)高精度計算に必須の入力項目である導電率を角棒試料によって測定した。(4)測定した表面損と導電率の値から有限要素解析によって,高精度計算に必須の入力項目である比透磁率を推定した。
当該年度に得られた成果は次の通りである。(1)直流磁束に交流磁束が重畳した場合の表面損測定を実現した。(2)表面損および推定比透磁率が直流磁界によって大きく変わることを明らかにした。(3)高精度計算のためには,直流磁界に応じて比透磁率を大きく変える必要があることを示した。
今後は,試料のマイナーヒステリシスループと推定比透磁率の関係を明らかにすることによって表面損の物理現象を把握し,高精度計算方法の確立を目指す。
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