研究概要 |
数値化された人体詳細モデルの異なる2箇所に平板電極を付けて電位差を与えた場合における体内電流密度分布を数値解析するために, 平成20年度では数値解析コードの検証と典型的な電極配置による解析結果の検討を行った。 先ず, 数値解析コードの妥当性を検証するため, 直方体状及びL字型の水槽に媒質(生理食塩水)を満たし, アルミニウム板を用いた電極を配置して60Hzの電位差を与えた場合について, 媒質内の電界分布を微小2点間プローブを用いて測定し, 結果を同条件における数値解析結果と比較した。両者の結果から, 特にL字型の媒質の場合における電流は電極間の最も短い経路を流れる分布になるなど, 基本的な電流分布特性を確認した。さらに, 両者の結果は分布的・数値的によく一致しており, 数値解析コードの妥当性を確認することができた。 次に, シミュレーションの典型的な例として, 人体詳細モデルの(1)左手-両足間, (2)右手-両足間, (3)左手-右手間に接触電流を流した計3パターンの場合における体内電流密度分布を数値解析した。手の場合には手のひらに約1000cm^2の電極を, 足の場合には足裏に約2500cm^2の電極を貼り付けており, それぞれのパターンにおいて電極間にIV(60Hz)の電位差を与えた。解析後に, どのパターンでも体内の通電電流が0.5mAとなるように電流密度の値を比例的に修正した。 解析結果から, 各パターンにおいて神経系組織における電流密度の最大値と平均値を算出した。頭部における小脳や大脳では電流経路から離れているため, 電流密度は非常に小さかった。しかし, 心臓では電流密度の最大値が10mA/m^2程度になる場合があるなど比較的大きくなっていることが分かった。すなわち, 接触電流の参考レベルと基本制限の関係が一致している。また, (1)左手-両足間のパターンにおいて, 接触電流の約40%が心臓を通過する結果が得られた。
|