平成19年度は、化合物半導体ポーラス構造の精密なサイズ制御を実現することを目的とし、陽極反応で形成されるポーラス構造の高密度形成と、陰極分解反応により孔壁を溶解させ薄くする「連続的電気化学プロセス」を開発した。主たる成果を以下に示す。 1.InP礼壁の分解速度は、印加電圧と時間により変化することを明らかにし、30nm〜15nmの間で、ナノメータースケールの精度で制御することに成功した。また、InP(001)基板を用いて形成したポーラス構造の場合、形成時にほぼ円形だったポーラス孔の形状は、陰極分解反応により4つの等価な{100}面で囲まれた四角形へと変化することが分かった。これは、孔壁の分解反応が結晶方位に強く依存することを示しており、結晶低指数面(ファセット)による自己静止特性を有することを示している。さらに、陰極分解反応による孔壁のエッチング速度は数A/sec以下のオーダーで、通常の溶液エッチングに比べて非常に小さく、複雑な形状を有するナノ構造の微細加工に適している事を示した。 2.作製したInPポーラス構造の光学的特性を、フォトルミネッセンス(PL)法を用いて評価した。ポーラス構造のPLスペクトルは、プレーナ基板から観測されるバンド端発光と比べ、室温において、高エネルギー側にシフト(ブルーシフト)することが分かった。また、陰極分解により孔壁を薄くすることにより、シフト量は増大した。このシフト量のサイズ依存性は、InP孔壁の量子化エネルギーを想定した理論計算と良く一致することを明らかにした。 3.GaN表面にUV光を照射しながら電圧一定モードで陽極反応を誘発させると、基板表面のラフネスが増大する事が分かった。表面組成分析の結果、表面におけるGaNの分解と金属Gaの析出を示唆する結果を得た。一方、電流一定モードで陽極反応を誘発させると、表面のスムースなGa_2O_3膜が形成される事が分かった。これにより、陽極法を用いたGaN系材料に対する表面加工プロセスの可能性を示した。
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