平成19年度において申請者らはミクロンオーダーの面分解能を持つ新規過剰キャリアライフタイムマッピングシステムの開発を行ってきた。その過程においてマッピング用にX-Yステージを購入し、過剰キャリア信号を検出するオシロスコープと連動させ自動測定を行うソフトウェアを開発した。このソフトウェアにより2次元的な過剰キャリアライフタイムマップの取得が可能となり、測定時の人的な負担が少なくなると考えられる。現在は励起レーザーの光学系を整備中であり、測定システムの面分解能をミクロンオーダーまで上げる予定である。 また一方、p型4H-SiCサンプルを準備し従来の過剰キャリアライフタイム測定装置を用いて予備的な評価を行った。その結果、p型4H-SiCのバルク結晶においては過剰キャリアライフタイムの分布がミリメーターオーダーで存在することがわかり、構造欠陥がその原因であることが予想された。さらにバルク結晶の過剰キャリア減衰曲線には時定数成分が複数あり、バンドギャップ中の深い準位がキャリアをトラップしていることが示唆された。またp型4H-SiCのエピタキシャル膜の過剰キャリアライフタイムの評価も行い、そのライフタイムがバルク結晶のものよりも長く、単調な減衰曲線を示すことが確認された。その結果によりエピタキシャル膜においては深い準位はライフタイムに影響を及ぼすほどの濃度がないことが想定され、転位などの影響が懸念される結果となった。今後はこれらのサンプルで得られた結果と、新規に開発するマッピングシステムによる評価結果を比較し、新規システムによる評価が妥当であるかを検証する。また、新規システムにより構造欠陥よりも小さいミクロンオーダーの転位などがライフタイムに与える影響を詳細に調査する予定である。
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