平成21年度においては平成20年度に引き続きミクロンオーダーの面分解能を持つ新規過剰キャリアライフタイムマッピング装置の開発を行った。その結果、装置は完成し、シリコンのキャリアライフタイムをマッピングすることに成功したが、目標であるSiCのマッピングには信号雑音比の問題により成功していない。よって、研究期間終了後も改善の努力を続ける必要がある。 一方、SiC中のキャリアライフタイムを支配している物理現象の理解のために、平成20年度に引き続きp型4H-SiCエピタキシャル膜に対し電子線照射により意図的に欠陥を形成した試料を作成し過剰キャリア減衰曲線を評価した。さらにこれらの試料に対するアニールの影響を過剰キャリア減衰曲線の点から議論した。その結果、電子線照射によって形成された再結合中心として働く欠陥は1000℃のアニールによってある程度消滅することがわかった。この結果は、欠陥を形成させることでキャリアライフタイムコントロールを行う場合、その後の工程のアニール条件に注意する必要があることを示している。その一方で、as-grownのP型4H-SiCエピタキシャル膜においても1000℃のアニールによりキャリアライフタイムが変化することも判明した。結晶成長後に成長温度以下のアニールにおいてもキャリアライフタイムが変化することは、結晶の微細構造がアニール雰囲気に依存しながら変化することを示唆している。 これらの実験結果はSiCバイポーラデバイスにおけるスイッチング速度、オン抵抗の値を制御する際に有用な情報を与えると考えられる。
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