研究概要 |
電子部品などのパッケージフィルムは多重構造となっており, 使用目的によっては帯電が障害となるため, エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)などの融着層に帯電防止剤を配合する。内部混練型帯電防止剤の場合, 成形後にベース樹脂に混練された帯電防止剤が内部から表面にブリードアウトすることにより帯電防止効果が発現する。一方, 融着層と構造層の接着を確保するために中間層として帯電防止処理を施さない低密度ポリエチレン(LDPE)のような材料を使用する。この場合, 中間層/融着層からなる複合層が存在することになり, 融着層の添加剤が濃度拡散によって中間層へも移行し, 帯電防止効果が損なわれる恐れがある。したがって, 最適濃度設計のためには中間層への添加剤の拡散過程を正確に把握する必要がある。 そこで本研究ではLDPEと帯電防止剤を混練したEVA複合層を用いて空間電荷を測定した。また, 帯電防止剤濃度を変化させた試料の体積導電率を測定し, その導電率差からEVA/LDPE界面付近に蓄積する電荷量を数値計算した。その結果, 電圧履歴が異なるにも関わらず, 界面付近およびLDPE中の空間電荷はほぼ同様な分布を示した。これは電圧印加による影響よりも, 体積導電率の増加をもたらす帯電防止剤の拡散による影響が大きいものと考えられた。また、EVA側にのみ帯電防止剤が配合された状態でLDPEと接合された場合を仮定し, 試料内の導電率分布に基づく蓄積電荷量を数値計算した。その結果, 界面付近における電荷の挙動は空間電荷測定の結果と定性的に一致した。さらに, それらを比較することにより, およその拡散係数を算出することができるものと考えられた
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