原子層制御化学気相堆積法(Atomic Layer Deposition : ALD)を用いて、Pt膜上へのLa系高誘電率絶縁膜(high-k)の成長を行い、Dynamic Random Access Memory(DRAM)セルキャパシタに求められるMetal-Insulator-Metal(MIM)構造への応用のための知見を得ることを目的とした。 La(TMOD)3とO2を同時供給し、異なる基板温度(200〜400℃)でLa酸化膜の堆積を行った。La酸化膜中の平均化学組成を見積もった結果、残留炭素が〜10at%程度の混合する均一組成の膜形成が確認された。また、Pt4fとLa3d信号強度比より、La酸化膜厚を大まかに算出した結果、堆積時間の増大に伴い、基板温度200℃では、La酸化膜厚は堆積初期の3分で〜1.8nmまで成長し、それ以降で膜成長は認められないのに対し、300℃以上の基板温度では、連続して膜成長が進行する。 次に、O2の同時供給を行わずに、基板温度200℃でLa(TMOD)3による表面吸着を試みた結果、供給時間に依らず、La3dおよびO1sの信号強度に顕著な変化は認められず、一定組成の分子種がPt表面に吸着していることが分かった。また、La3dとPt4fの信号強度比から、分子吸着層の厚さは〜0.5nmと見積もられる。 光電子脱出角度90°と30°を比較し、飽和吸着後のLa酸化膜表面近傍の化学結合状態をより詳しく評価した結果、光電子脱出角度90°の結果に比べて、30°で測定したC1sおよびO1sの信号強度は、増加していることから、La酸化膜表面はCOxHyが終端しており、膜成長が停止していることが分かった。基板温度200℃でのLa(TMOD)3の飽和吸着と200℃のO2アニールを1サイクルとし、繰り返し行うことでLa酸化膜の形成を行った(図5)。サイクル数の増加に伴い、La酸化膜に相当するLa3dおよびO1s信号強度は増大する。 このとき、C1sスペクトルに顕著な変化は見られない。また、AFMで評価したLa酸化膜形成前後の表面ラフネスはほぼ一定であり、La酸化膜が原子レベルで均一に成長していることが考えられる。前駆体の飽和吸着とO2アニールを繰り返すことで、原子層レベルでの膜厚制御が可能であることが示唆された。
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