本研究は、ハーフメタル強磁性体とカーボンナノチューブからなる磁気抵抗素子を作製し、その磁気抵抗効果を利用したスピン状態検出プローブ応用を目指すものである。平成19年度はその目的に対し、Co系ホイスラー合金のなかでも理想的な磁気特性を得やすいと考えられるC0_2MnSi、およびC0_2MnGeの成長と基本的な磁気特性、結晶構造を調べる事を主に行なった。良好な磁気特性をもつ強磁性金属材料を得ることは、目的のデバイス性能の向上に対して必須の技術だからである。これまで本研究ではMgO基板とCo系ホイスラー合金の格子定数が比較的に近い事に着目し、マグネトロンスパッター法によるエピタキシャル成長の可能性を検討してきた。その結果、今回の研究からC0_2MnSi、およびC0_2MnGeがMgO基板上に単結晶成長する事が確認された。さらに、これらのホイスラー合金を磁性電極として用いた磁気抵抗トンネルデバイス(Magnetic Tunnel Junction)の作製をも行なった。これはスピン検出プローブの主要な性能を決める要素デバイスである。結果として室温でも十分高いトンネル磁気抵抗比を得た。これらの成果は、ナノチューブと組み合わせた接合デバイスの完成に向けて非常に意義のある結果である。本研究の成果は、平成19年度において論文9編と学会30件(うち国際会議8件)に発表された。また現在論文として投稿中のものもある。
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