カメラやディスプレイなどの画像システムの進化の究極の目的は、高精細でリアルな画像であり、従来は高解像度化のアプローチが主にとられてきた。しかし撮像素子やディスプレイの高解像度化は、信号処理回路や伝送回路の設計の困難化や消費電力の増大という深刻な問題に直面しており、また光の波長の制限からも、これ以上の高解像度化は原理的に困難となりつつある。さらに、通常の格子状に配置された画素からなる画像は、人間の目には格子として認識されるため、画素配置に平行な水平線と垂直線は完全に直線に見えるが、斜め線は正方格子の近似配置によるギザが現れる、すなわち画像の表現の精細が図形の方向によって異なる方向特異性が存在する。特に水平に近い直線で現れるギザは空間周波数が低いために、人間の目には非常に目立って感じられ、高精細な画像を表現するための大きな制限要因となる。しかし従来の格子状の画素配置をもつ画像システムでは、高解像度化をいかに進めようとも、この方向特異性の問題は、根本的に解決が不可能である。本研究では、画素の中で画像の構成に実質的に関与する領域が画素面積の一部分のみを占める点に着目し、有効領域の空間配置が擬似的に不規則とすることで、この方向特異性の問題を根本的に解決することが可能である撮像素子・ディスプレイを実現するための理論的・実験的検討を行った。理論的検討では、画像の空間スペクトルからジャギーの本質を見極めることに成功し、その指標の定量化を試みた。また実験的検討では、擬似的な不規則画素配置を持つCMOSイメージセンサを、通常の格子状画素配置をもつCMOSイメージセンサとあわせて設計・試作し、その撮像特性の評価を試みた。
|