研究概要 |
1. 埋込み型マイクロストリップ線路(MSL)分光チップとシングルモード光ファイバーの結合に成功した. 60cmのシングルモード光ファイバーを用いた時, THz波発生源から1mm伝搬後の帯域は2THzから0.6THzまで狭くなった. これは群速度分散の影響を受けてパルス幅が広くなったためである. しかしながらこのファイバー結合型素子を用いて, 水・メタノール・エタノールを測定し光学定数による判別に成功した. さらに水/エタノール混合液体も測定し, 5%のエタノール分解能で光学定数の検量線を引けることがわかった. 本研究により, THz分光チップをリモートセンサーヘッドとして機能させることに世界で初めて成功した. 2. コプレーナ線路(CPS)型分光チップにおいて, THz波発生源・検出器に用いる低温成長(LT-)GaAsの成長・アニール条件の最適化を行った. MBE法でLT-GaAsを成長した. 成長温度は220, 250, 280℃の3条件で, 成長後のex-situアニール温度は450, 500, 550, 600℃の4条件で行った. これらのLT-GaAsを用いてTHz波伝搬特性を評価した結果, アニール温度が低いほど帯域が伸びることが明らかとなり, 450℃において4THzという広帯域化を実現した. これはLT-GaAs中のキャリア寿命がアニール温度の低下とともに短くなることが原因である. 3. MSLは一般的にCPSよりも伝搬損失が少なく, 広帯域なTHzパルスが伝搬可能であると期待されているが, 現在までそのようなMSLは実現していない. これはMSLに用いている誘電体層の誘電損失が大きいためと考えられる. そこで, 代表的な誘電体BCBの成膜条件を見直した. その結果, 窒素ガス雰囲気中でキュアを行って成膜すると, THz波帯域が従来の2THzから3THzまで伸びることがわかった.
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