次世代の超高速大容量光通信網の実現には、伝送帯域全体(波長1.2-1.7μm)を増幅可能な超広帯域光増幅素子が不可欠である。遷移金属イオンは、現在増幅媒体に用いられている希土類イオンと比べて広帯域な発光特性を持つため、上記の光増幅媒体としてのみならず、近赤外域における波長可変レーザー、超短パルスレーザーなど様々な応用が期待される。我々はこの遷移金属イオンに注目し、Ni^<2+>添加MgO(Ni:MgO)およびCr^<4+>添加Mg_2SiO_4(Cr:Mg_2SiO_4)ナノ結晶微粒子を、独自の「噴霧火炎法により作製し、広帯域の蛍光を確認している。本研究では、遷移金属イオン添加ナノ結晶微粒子の光増幅媒体としての応用を目指し、Ni:MgOおよびCr:Mg_2SiO_4分散有機・無機ハイブリッド材料の作製およびその光学特性の評価を行なった。 ジフェニルジメトキシシラン(DPhPMS)、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS)、チタニウムテトラ-n-ブトキシド(TTBu)より作製したゾル溶液へ、噴霧火炎法により作製したNi:MgOおよびCr:Mg_2SiO_4ナノ結晶微粒子を分散させた。これを60℃でゲル化、200℃まで段階的に熱処理をする二とで試料を得た。半導体レーザー(波長974nm)励起による蛍光測定(波長l000-1700nm)等の光学特性評価を行なった。ナノ結晶微粒子とホストの屈折率を近付けることで散乱が減少し、透明性に優れた試料を作製できたことから、ゾルの組成を精密に調整することで、完全に透明な利得媒体を作製可能であることが示唆された。また、作製した試料の発光スペクトルをそれぞれ測定した結果、ホストへ固定後も粉末とほぼ同様の発光を示すことから、ナノ結晶微粒子はホスト中で凝集することなく分散しており、本材料が透明利得媒体として応用可能であることがわかった。
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