本年度はまず、分子線エピタキシー(MBE)法を用いて自己形成InAlAs量子ドットとGaAs量子井戸が隣接する構造をAlGaAs半導体中に作製した。これを加工することにより、量子ドット中の電子のエネルギー状態を、導波路中を伝搬させる光との微弱な結合を用いて検出する構造を実現した。 次に、この構造による発光・吸収スペクトルを測定するために、光学測定系の作製を行った。量子井戸、量子ドット中のエネルギー準位の尖鋭化のために、試料を液体窒素温度まで冷却するため、試料周りの外気を遮断する真空冷却装置を作製した。これにより、液体窒素温度における構造からの安定した発光スペクトルの観測が可能となった。 また、自己形成的に成長されたInAlAs量子ドットの粒径を判断するため、量子ドット中に励起された電子-正孔対のエネルギー準位に対するサイズ依存性を数値計算により計算した。この結果により、試料断面をAFMなどの大掛かりな装置を用いて観察することなく、光学スペクトルを測定することにより非破壊でドットサイズや密度を算出することが可能となる。逆に、指定波長の光と選択的に相互作用を引き起こす量子ドットのサイズを算出することも可能となるため、構造設計のための重要な足がかりとなる。 本年度作製された光導波路-量子ドット結合構造を光共振器構造中に作製することで、量子ドット中の電子と光との相互作用強度を変化させ、これにより光による信号制御を可能にする演算素子への応用に繋げていく予定である。
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