本年度は、昨年度作製した光学測定系を用い、量子井戸光導波路-ドット結合構造を有する試料の測定を行った。この結果、光導波路中の伝搬光において、量子ドットの共鳴波長におよそ0.5%の透過率の減少が見られた。このことは光導波路中の伝搬光について、量子ドットのエネルギー準位に対応する波長の透過率を調べることにより、量子ドット内の電子状態に関する振動子強度を読み出すことができることを示している。しかしながら量子ドットの影響による透過率の減少が0.5%と非常に小さく、これは量子井戸による影響よりも小さく、理論的予測に反する。このような結果になった要因として、導波路のクラッド層の厚さと(コア層との)屈折率差が不十分であったことが考えられる。より明確な透過率の減少を測定することが今後の課題である。 また、分子線エピタキシー(MBE)法を用いてAIAs層とA10. 4Ga0.6As層を交互に積そうしたDBR共振器を作製し、その反射率の波長および入射角度依存性を測定する装置を作製した。これらを用いて77KにおけるDBR共振器の反射率測定を行い、共振波長付近における高い反射率と、共振波長における反射率の減少を得た。また、同様の構造をモデル化し、FDTD法に基いた電磁波伝搬シミュレーションを実現するプログラムを作製し、入射光の波長および入射角度による反射率の変化を計算した。計算結果と実際の試料の測定結果の間によい一致が見られた。
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