研究概要 |
1 Tbit/in^2以上の面記録密度を実現するために,熱安定性に優れたビットパターン媒体が期待されている.そこで,本研究では1 Tbit/in^2の面密度に対応する25 nm周期の磁性ドットアレイの作製に関する基盤技術を確立し,さらにビットパターン媒体の設計指針を実験的に検証することを目的としている. 本年度は2次元的に等方配列した25 nm周期の磁性ドットアレイの作製基盤技術を確立し,その磁気的評価を行った.まず磁性ドットアレイの作製プロセスの検討を行った.ドットパターンの転写プロセスとして,磁気的ダメージを低減するために軽元素かつ低エネルギーイオンを用いたエッチングプロセスが有効であることを,モンテカルロシミュレーションにより見出した.低ダメージプロセスの有効性を確認するために,電子線描画によりパターニングしたレジストパターンをマスクとして,200eVのArイオンを用いたイオンミリングにより,20〜100nm径のドットアレイを作製した.電子顕微鏡および原子間力顕微鏡による形状観察の結果,マスクの形状をほぼ反映できていることが確認できた.次にSPring-8の放射光を用いた顕微磁気円二色性 (micro-XMCD)により,このドットアレイの磁気特性評価を行った結果,ドット径が変化しても飽和させた状態でのXMCD強度はほとんど変化しなかった.また,保磁力のドット径依存性は,マイクロマグネティクス計算の結果とほぼ一致した.これらのことから,軽元素かつ低エネルギーイオンを用いたエッチングプロセスにおいて,磁化の大きさおよび磁気異方性エネルギーに対するダメージは極めて小さいことが明らかとなり,1 Tbit/in^2の面記録密度を実現するための低ダメージプロセスの有効性を確認できた.
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