研究概要 |
平成19年度は,アナログフィルタおよびディジタルフィルタの精度を測る尺度として用いられるさまざまな評価量と,周波数変換との関係について解明することを目的として,フィルタの理論的な解析を中心に研究を行った.研究実績の詳細は下記の通りである. 1.アナログフィルタの素子感度・ダイナミックレンジ・エネルギー蓄積容量の大きさを記述する「2次モード」とよばれる値が,周波数変換に対して不変であるという性質を解明した. 2.ディジタルフィルタの性能評価において重要なL2係数感度およびリミットサイクルと,周波数変換について解析を行い,以下の成果を得た. (1)L2係数感度の最小値は,従来の周波数変換に対しては不変とならないが,特定のクラスのディジタルフィルタを対象とし,かつ本研究者が提案する「グラミアン保存周波数変換」を用いた場合は,L2係数感度の最小値は変換の前後で不変となる,という性質を明らかにした. (2)ディジタルフィルタを実現する場合には,リミットサイクルフリーの構造を合成することが望ましいが,この構造は,従来の周波数変換を適用すると失われてしまう.これに対し,本研究者が提案する「グラミアン保存周波数変換」を用いた場合は,リミットサイクルフリーの構造が変換の前後で保存される,という性質を明らかにした.この性質は,L2係数感度の場合とは異なり,任意のディジタルフィルタに対して成立する. 3.項目1の性質について,損失性を有する一般的な変換を用いた場合を対象として解析を行った.この解析により,一般的な変換を用いた場合は,2次モードの値は減少することを明らかにした.
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