研究概要 |
本研究では,アレーアンテナによる適応信号処理技術,特に「アレー補間」と呼ばれる高精度化技術に焦点を絞り,フレキシブルでかっ包括的な電波伝搬環境推定技術の確立を目指している. 平成21年度は,アレー補間法および拡張Root-MUSIC法について,相関抑圧のための空間平均処理と同様の前処理をアレーステアリングベクトルに適用することで,到来波推定精度が改善されることをシミュレーションと実験の双方から確認した.ステアリングベクトルのマッピングにおける誤差を低減できており,結果として到来波推定の精度を改善しているものと考察される.また,アレー補間法や拡張Root-MUSIC法が仮想アレーの素子数に制限があったことに対し,提案法ではそうした制限がなく,より広範な拡張が今後期待できる手法であると言える. また,キャリブレーションを包含する形でアレー補間の理論を展開していくことを目的として,アレー補間から発展したブラインドキャリブレーションについての検討を行った.従来,リニアアレーでは適用が難しいと考えられていた手法を,ダミー素子を用いて結合の影響度を均一化することにより適用可能とした.さらに,複雑な行列演算を排除して特異値によるスペクトルでの代替が可能であること,その推定精度および演算量がともに従来法よりも優れていることを実証した.
|