研究概要 |
光ネットワーク上でグリッドコンピューティング環境を提供する光グリッドでは,計算機資源間を光パスで接続してグリッドジョブを超高速伝送し,大容量ジョブの高速処理を実現する.光グリッドで複数ユーザが効率よくジョブを実行するには,計算機資源だけでなく光ネットワーク内の波長資源も有効利用することが必要不可欠である.しかしながら,従来研究では両資源を独立に管理するため,結果としてどちらかの資源が高速グリッド処理のボトルネックとなってしまう.それゆえ,高性能な光グリッド環境を構築するには,両資源を協調管理して有効利用することが重要となる.そこで本研究では,制御工学で近年注目されているハイブリッド制御を光グリッドに導入し,ジョブ伝送量を変動させるコントローラと、光パスの動的設定/解放を処理するコントローラの高度な連携を目指す.本技術の確立には制御理論の導入が必要であるが,光グリッドの資源管理に制御理論を使用した研究はこれまで行われていない.そこで平成19年度は,まず初めに,制御工学で広く使用されているPID制御を用いた資源管理方式を提案した.提案方式では,計算機内バッファと光パス設定/解放処理を数理モデルで表現し,PID制御によって(1)バッファ内ジョブ量を一定にするジョブ送信処理と,(2)波長使用数が最小となる光パス設定/解放処理を同時に実現する.本方式の性能をシミュレーションで評価し,様々な環境下で有効性を確認した.数値結果から,PID制御を資源管理に用いることで,多数のユーザが両資源を有効利用できることが判明した.さらに,本研究の最終目標であるハイブリッド制御の導入に向けて,数理モデルを拡張した.具体的には,光パスの設定/解放処理を離散変数として数理モデルに組み込んでハイブリッド制御の利用を可能にし,拡張モデルの妥当性をシミュレーションで確認した.
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