テラビット級の大容量通信を実現する次世代基幹網として、光パス網が期待されている。光パス網では、高いスループット(より多くのトラヒックを収容できること)、および、スケーラビリティ(ネットワークの大規模化に対する拡張性)、が求められる。光パス網では、送受信ノード間の経路上に位置する各ファイバで同一の波長を光パスへ割り当てなければならない、という制約(波長連続性制約)があり、この制約が光パス網のスループントを低下させる要因となる。しかし、波長変換を行うことにより異なる種類の波長を用いた光パス設定が可能となり、スループットは向上する。ただし、波長変換器は高価であるため少数のみしか配置されない。そのため、光パス設定時にどの中継ノードで波長変換を実施するかを動的に決定する光パス設定方式が必要となる。本研究では、中継ノード上で各ノードペアの波長変換器使用履歴を収集し、それに基づき各ノードペアが設定する光パスの波長変換実施箇所の棲み分けを実現する光パス設定方式を提案した。複数の光パスの波長変換実施箇所が競合しそれらの光パス設定要求が棄却されることを提案方式は回避するため、高いスループットを達成できる。シミュレーション評価により、提案方式は従来方式と比較して7〜24%程度光パス棄却率を低減できることを示した。また、提案方式において各中継ノードが保持する波長変換器使用履歴の容量は高々数十バイトであり中継ノードに具備されるメモリの容量よりも十分小さく、提案方式がスケーラビリティを損なうことはないことを示した。
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