研究概要 |
研究代表者は, 数学的上界に比較的近い零相関範囲を持つ多相ZCZ系列の構成方法を得ることに成功している. また, 移動体通信に適した特性を持つ符号化三相位相変調方式も提案している. これらの研究成果をもとに, 本研究では, 相互相関特性に優れる三相ZCZ系列の構成方法の確立とその近似同期CDMAシステムへの応用を目的としている. ZCZ系列では零相関範囲内において理想的な相関特性が得られるので, 単一セル内においてチャネル間干渉のないCDMAシステムが実現可能である. しかしながら, ZCZ系列を用いたCDMAシステムにおいても, 隣接セルからのセル間干渉を防ぐことはできない.セル間干渉を低減するためには, 隣接するセルに良好な相互相関特性を持つZCZ系列の組み合わせを割り当てる必要がある. 研究代表者が提案した三相ZCZ系列は大きく分けて3つのタイプに分類することができる. 昨年度の研究では, そのうち1つのタイプについて相互相関特性が良好な三相ZCZ系列の組合せを得るための選択基準の一部を明らかにした。本年度の研究では, 3つのタイプ全てについて相互相関特性が良好な三相ZCZ系列の組合せを得るための選択基準を明らかにした. その結果, 周期3および周期9の三相直交系列を用いるタイプでは, 相関特性が良好な直交系列の組み合わせを選択することが, 相関特性に優れる三相ZCZ系列の組合せを得るために重要であることが明らかとなった. また、三次のDFT行列を用いるタイプでは, ある特定の置換の組み合わせを選択することが, 相関特性に優れる三相ZCZ系列の組合せを得るために重要であることが明らかとなった. さらに, 系列の周期に対する相互相関値の最大値の比率および零相関範囲の比率の2つの観点から考えて, 周期9の三相直交系列を用いるタイプが, 近似同期CDMAシステムに最も適した二相ZCZ系列であることも明らかとなった.
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