1.楕円曲線符号に対する符号化・復号化モデルの作成:楕円曲線符号はReed-Solomon(RS)符号の二重構造を持ち、代数幾何符号のうちで最もシンプルな構造を持つため、まずこの符号について研究を着手した。また512バイトの情報を一つの符号語に符号化できるように構成した。このとき訂正能力はRS符号とほぼ等しく、しかも冗長を最大77ビット削減できる。この楕円曲線符号に対しグレブナ基底エンジンを確立した。すなわち、(1)Berlekamp-Massey-阪田(BMS)法を実行する演算器を復号化にはもちろん符号化におけるグレブナ基底を応用する箇所においても使い、(2)符号化において必要となる離散フーリエ変換の演算器を復号化におけるシンドローム算出、さらにはBMS法の後の誤り値算出にも使い回したものである。なお離散フーリエ変換については、この場合の高速Fourier変換は2^9-1=7×73と約数が少なくあまり効果的ではなく、この部分の回路規模削減が今後の課題として残った。 2.高性能な二次元巡回符号の探索:提案符号化・復号化法はそのまま二次元巡回符号に対しても適用可能であり、この符号を再評価した。またさらに大きな符号のクラスである一般化擬巡回符号に対し、符号化で用いるグレブナ基底を計算するアルゴリズムを発表した。これを用いて符号化器を構成し、回路規模が符号長のほぼ線形オーダーであることを示し、有効性を証明した。 3.Hermite曲線符号に対する符号化・復号化モデルの作成:Hermite曲線符号は最もよく知られた代数幾何符号であり、平面曲線符号のうちでは現在までのところ最高性能を示す。この符号に対する符・復号化器を基本的にはグレブナ基底エンジンと離散フーリエ変換演算器だけで構成し、符・復号化の両方においてこれら二つの演算器を用いることによって回路規模を削減した。
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