研究概要 |
企業における組織内の知識共有には,組織形態が大きく影響する.そこで,ネットワークモデルを用いて組織のモデル化を行った. 企業内の人的ネットワークは,プロジェクトの種類や異動など様々な要因によって変化する.特に,異動による所属部署の変化や,企業内でのコミュニケーション頻度は人間関係に大きく影響する.異動に関しては,従来より業務の効率化を図るためには適材適所による人員配置が必要であるとされている.しかし,適材適所という理由のみで異動させたのでは,企業内の人的ネットワークが破壊され,知識継承が妨げられる可能性がある.また,知識共有の観点から考えた場合,企業内の人的ネットワークを拡充することにより,「知識が伝達可能な状況」を作ることが重要であるとされている.そのため,異動や人員再配置を行う場合,人的ネットワークを充分考慮する必要がある.そこで本研究では,このような人的ネットワークが企業の作業効率に及ぼす影響について,マルチェージェントシミュレーションを用いて分析した. その結果,労働者間で行われる知識継承に対して人間関係の影響を導入することにより,企業内の人間関係が知識継承に及ぼす影響を表現した.そして,本モデルの妥当性をCrossらのデータを用いて検証した.さらに,人的ネットワークに対して影響を与えるものとして,適材適所による人事を想定し,シミュレーションを行った.その結果,適材適所が企業全体の知識量,および作業効率を増加させることが確認された.
|