研究概要 |
超電導コイルがクエンチすると,急激な局所的温度上昇や高電圧による超電導導体の特性劣化,あるいはアーク放電による導体の損傷や絶縁破壊,構造物破壌などの事故が発生する場合がある。そのような不測の事態に至らないよう,クエンチした場合にはできるだけ早くクエンチを検出し,コイル内部の蓄積エネルギーを外部に引き出し,コイルの温度上昇を抑える必要がある。 本年度では,これまでに提案・報告してきているクエンチ保護方法である有効電力法を冷凍機冷却型高磁場マグネットに適用可能にするためのシステム開発を行った。冷凍機冷却型マグネットは浸演冷却型マグネットよりも熱的安定性が低く,クエンチ後の温度上昇が過大になるため,クエンチ保護システムにはより高い安全性が求められる。冷凍機冷却及び13 Tの高磁場中におけるNb3Al 小型超電導巻線を用いた実験により,本システムにてクエンチ後の温度上昇を非常に低く抑えられることを確認した。さらに相互誘導電圧の除去が必要となるグレーディングされたコイルに適用できるよう有効電力法の特性改善を行い,Bi2223高温超電導コイルによる検証実験の結果,その有効性が確認できた。これらの成果を雑誌論文および学会にて癸表した。また,熱的・電気的に接触させずに高いSN比にて高温超電導線材の局所的温度王昇を極出する方法として提案しているAE信号の時間周波数可視化法(ウェーブレット変換)について,Bi2223コイルおよびYBCOコイルに適用可能にするための計測システム開発を行った。両コイルを用いた検証実験により,本システムにて浸漬冷却・断熱冷却のどちらに対しても両コイルにおける局所的温度上昇の検出が可能であることを確認した。これらの成果については来年度に発表を予定している。
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