本研究では、要素数として小規模アレイ状音源を採用し、その音源の特徴に基づいた、新たな音響波イメージング手法、空間情報取得法を構成することを目指している。 その過程において、本年度においては、まず、空間中を回折しないで伝搬する音響波ビームを放射する、円環アレイ状音源について、個々の素子形状に関する検討を実施した。 本方式において使用される円環状要素は、その幅を第一種0次Bessel関数に従った値とすることにより、幅の鋭いビームを得ているが、各要素幅は、理論上は無限に細かい精度を取ることが可能となる。しかしながら、実際の音源の製作にあたっては、その精度は有限のものとせざるを得ない。また逆に、材料加工等の過程で、非常に細かい精度を要求しないでも構わないこととなれば、そのことは、音源の構築過程全体を通じての簡略化、効率化に寄与するものと考えられる。 これらの考えを踏まえ、音源要素の幅に関して精度を低下させた円環アレイ音源を設定し、精度を低下させたことによる、放射ビームの形状への影響について、解析的に検討を行った。検討を行うにあたり、音源要素の幅について精度を低下させるための方法として、要素幅の刻みに制限を設ける、rounding処理を適用した。 解析より、要素幅の刻みにrounding処理が適用され、各音源要素の幅がBessel関数に対応した値を持つことがなくなる程に、精密に設定されていない場合においても、所望の要素数と最外要素の中心半径を満たしていれば、放射ビームの形状に著しい乱れは見られず、幅の鋭いビームが安定して形成されると考えられる結果が得られた。 現在、これらの結果を踏まえ、実際の音源における音響波放射の予備実験を行うべく、音源の試作を継続して実施している。
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