本研究では加速管空洞の内部三次元形状測定装置の開発をおこなった。これは、電子-陽電子衝突実験用の直線加速器に用いる加速管空洞の内部三次元形状を0.1mmの精度で測定する装置である。加速管の1ユニットは、セルと呼ばれる単位空洞が9個連なった串団子状の複雑なベロー形状をもつ。その長さば約1000mm以上、直径は絞り・開口部φ80mm、赤道部φ210mm程度と大きく変化する。従来の手法ではこの内部形状を測定できないため、管内に挿入する三次元形状測定器の開発を行った。 本年度は、昨年度までの二次元形状の測定基礎実験の結果をもとに、三次元測定可能な装置の製作・実験を行った。1セル測定装置を開発して内部形状が測定できることを確認し、ここで得られた知見をもとに、9連セルの測定装置を製作した。 これにより、加速管の開発に寄与し、ひいては高エネルギー物理学の発展に寄与できる。 本研究は工業的にも意義がある。CMMを始めとする現在の三次元形状測定は、殆どが対象の外部形状を測定する物である。比較的大型の複雑な形状を持つ工業製品の内部形状測定の需要は存在しており、本研究はそのような需要に応えられる。 通常、三次元測定器は、剛性を持たせ、恒温室等の環境で使用する事で精度を保証する。しかし、内部測定では剛性を保つことは困難で、可搬型で恒温室以外の環境でも測定するため、精度を保つことが困難となる。そこで、現場で円筒形アーティファクトを用いて校正をおこない三次元座標系を構築する円筒アーティファクト三次元校正システムを考案した。この結果、精度が向上する、環境の変化に強い、測定時に精密位置決めを必要としない、測定対象に比べて装置が小型になる等の利点が得られた。これは、多関節型CMMの精度・信頼性向上にも適用できる。
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