研究概要 |
合成開口レーダ(Synthetic Aperture Radar; SAR)を,光学観測に不向きな大気を有する天体の表面計測や,惑星の永久日陰地帯の観測など,将来の各種惑星探査ミッションに適用するため,広帯域通信を前提として地上で画像合成を行う従来の地球観測用システムとは一線を画したブレークスルーとして,探査機上におけるリアルタイムSAR画像生成処理の研究を行った.探査機上処理に適したSAR画像生成アルゴリズムの検討として,搭載計算機のリソースを鑑みた合成開口処理アルゴリズムの簡略化(レンジマイグレーション補正など)および並列化,さらにはオートフォーカス手法等の探求に関する作業を実施した.特に,合成開口処理において受信信号との相関演算に供されるアジマス方向の参照関数は,探査機の軌道情報から導出されるが,各種センサにより推定される軌道データの誤差の影響を吸収しつつ,かつ既設ターゲットに依存しないフィードバック処理的な自動合焦手法の研究を遂行した.これは,具体的には,一様な対象表面を撮する際のSAR画像の空間的揺らぎの統計に依拠するものである.また,このようなアルゴリズム検討と並行して,機上処理を実現するための搭載計算機の構成検討を行った.すなわち,処理アルゴリズムの演算量の見積もり,処理フローのブロック化/並列化に基づく機能配分の検討,人出力のデータレートやバッファリングすべき演算の中間結果のサイズなどを勘案した搭載メモリ量の推定,などの内容である.また,これらに係る性能検証のため,環境やシミュレータツール等を本経費により購入した.
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