研究概要 |
本研究の目的は同次固有値を用いて拡大付き同次システムの安定性判別法を確立することである。本年度は,同次かつ勾配である勾配同次システムが漸近安定となるための必要十分条件が,同次固有値がすべて負であることを明らかにし,国際会議で発表を行った.さらに,そこで得られた証明法を用いて,同次制御系に対して同次制御Lyapunov陰関数を用いた制御系の設計法を提案した.さらに,これらの結果と退化特異点におけるベクトル場のブローアップ理論の比較を行い,類似した手法ではあるが異なる点も多いことを確認した. 線形システム理論においては,複素固有値を導出するためにシステムの複素化を暗黙的に行ってきた.しかし,これまで複素同次システムは定義されておらず,その性質もわかっていなかった.本年度は実同次システムにおいて重要な役割を果たすEulerの公式が成立するように複素同次システムの定義を行った. また,複素同次システムに対しても実同次システムと同様に同次固有値を定義し,同次固有値め実部が負であることは複素同次システムが漸近安定になるための必要条件であることを明ちかにした. 複素同次システムこれまで,実同次システムの複素化が重要な問題であったが,本年度は(1,0)と(1,1)という二種類の複素化法を提案した.(1,1)型の複素化は実解析的な実同次システムを解析的な複素同次システムに変換する唯一の変換であることを明らかにした.しかし,実解析的な同次システムが漸近安定であっても,解析的な複素化システムが不安定になる場合が存在することも明らかにできた. 実向次固有値を用いたシステム解析たおいてはEuler球面と呼ばれる多様体上の大域的ベクトル場構造が重要な役割を果たす.そこで,本年度は被覆空間上の制御系の構造どもとの多様体め制御系構造の比較を利用したシステムの解析法を提案し,制御系設計のために最小射影法と名付けた手法を提案した.
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