研究概要 |
我が国の風力発電は1990年代から導入量が急増し, 2006年末で約150万kWに達している。政府としても, 2010年までに300万kWの風力発電導入量を目標としている。しかし, 風力発電の出力は風速および風向によって大きく変動するため, 電力系統と連系された風力発電機が増加した場合の周波数変動等の電力品質に与える影響が懸念されている。これらの背景を踏まえ, 資源エネルギー庁で設置された電力系統連系対策小委員会では, 周波数変動対策の一つとして, 気象予測に基づく風力発電量予測システムの導入を目標に掲げている。もし, 一定期間先の風速を予測することで風力発電出力を事前に把握できれば, 電力系統の安定性確保や発電電力の計画的な運用が実現できる。 これまで, 予測対象地点における10分先の平均風速を, 対象地点の局地的気象データを用いて階層型ニューラルネットワークにより予測する手法を提案した。また, 10分先の風速予測システムをモジュール化し, このモジュールを複数個カスケード接続することにより, 短時間先の予測期間に対応可能な風速予測システムも提案している。しかし, 持続モデルによる予測結果と比較すると, あまり大きな改善率が見られなかった。そこで本研究では, 10分先の風速予測システムにリカレント型ニューラルネットワークを適用し, 短時間先の予測期間における予測精度向上について検討した。まず, リカレント型ニューラルネットワークを用いた風速予測システムをモジュール化し, それを複数個カスケード接続することにより, 短時間先の予測期間に対応可能な風速予測システムを提案した。提案手法の有用性を確認するために, 予測期間を10分先から24時間先に設定しシミュレーションを行った。その結果, 30分先から6時間先の予測期間において, 予測精度の改良が見られた。今後, 8時間先から数日先までの予測期間における予測誤差低減のために, 風速予測システムの改善に取り組むことが考えられる。
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