研究概要 |
本研究は,制御系の閉ループに補償器を挿入することにより系の特性を改善するフィードバック補償の手法の1つである,微分フィードバックを実現するための微分信号を与える補償器である微分器のひとつである,同次スライディングモードと呼ばれるある非線形構造を利用して考案された同次微分器の回路実装,および,その性能の検証を目的としている.この同次微分器の回路実装により,制御対象から観測される信号の時間微分をリアルタイムに求めることが期待される.これは,ロボットに動的制御の根幹をなしている受動性に基づく制御戦略を可能にするという利点も兼ね備えている.受動性の統一的なシステム表現であるポート-ハミルトン系は,近年分布定数系に拡張されており,本研究結果の幅広いシステムへの適用が期待される. 上記の内容に基づく,本年度の研究成果は以下のとおりである. 1) 同次系,および,ポート-ハミルトン系の理論的な拡張に関する結果を,国際会議にて8件発表を行い,同時に,学術雑誌への投稿を準備した. 2) 同次微分器の制御対象のひとつと考えている人工筋肉アクチュエータのモデリングに関する研究結果は,国際会議IFAC (The International Federation of Automatic Control) - The 17th IFAC World Congressにて, Best Poster Paper Prizeを受賞した. 3) 本研究の基礎的な内容である非線形系の安定論に関する結果が学術雑誌に1件受託され,掲載された. 4) 同次系の理論的な方法を用いて,同次微分器の設計手法の考案とその内容の国際会議への1件投稿している. 5) FPGAを用いたデジタル回路実装およびアナログ回路実装の実験を行った.
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