本研究の最終目標は建設材料に使える木粉を液化した樹脂(バイオポリウレタン樹脂)の開発とともに樹脂の物性であり、構造設計に密接に関連する長さ変化に関しての基礎データを収集することにある。木粉を溶媒・触媒を使って液化してポリオールに変換し、イソシアネートで硬化させるバイオポリウレタン樹脂に関する研究はバイオマスの分野でこれまで行われていたが、建設材料用としての研究例はほとんどない。針葉樹である杉と広葉樹である白樺の木粉を原料とした樹脂の製造法を前年度で完成させ、平成20年度では、それらの樹脂を使用して樹脂の長さ変化を測定した。測定の結果、杉由来樹脂は白樺由来樹脂に比べて、線膨張係数が高いこと、加湿状態に置かれた場合、杉由来樹脂は白樺由来樹脂に比べて膨張が抑えられたこと、除湿状態に置かれた場合、白樺由来樹脂は杉由来樹脂に比べて、収縮が抑えられたことなど、原料によって長さ変化が異なることが分かった。この理由として、杉と白樺に含まれている成分の違いによる影響ではないかと考えている。杉のリグニンはグアイアシル構造のみであるが、白樺のリグニンはシリンギル構造も含まれており、その化学構造の違いは木粉の液化時間や樹脂の力学的特性に影響しており、長さ変化にも影響が及んでいると思われる。
|