研究概要 |
中性化,塩害,アルカリ骨材反応,化学的侵食あるいは疲労といった劣化機構によって,社会基盤を担う重要な構造形式であるコンクリート構造物の性能が時間的に大きく変化する可能性が指摘されている.中でも,中性化や塩害に起因するコンクリート構造物中の鉄筋腐食劣化は,RC構造の耐荷性能の根幹を成す鉄筋の断面減少および鉄筋とコンクリートの一体性低下をまねき,構造物あるいは部材の耐荷性能の低下を引き起こす恐れがある. 本申請課題では,RC部材の耐荷性能のうちせん断耐荷性能に着目し,鉄筋の腐食を模擬したRC供試体の載荷実験および耐荷挙動の数値解析的な検討を通じて,鉄筋腐食が生じたRC部材のせん断耐荷性能の評価手法を提案することを目的とした.平成19年度では,せん断補強筋の腐食を中心的に検討するために,供試体中のせん断補強筋の腐食を模擬したRCはり供試体を作製し,載荷実験を実施した. 以下に,本研究の範囲内で得られた主な結果を示す. (1)電食によりせん断補強筋に腐食を生じさせたRCはり供試体の曲げ載荷試験から,斜め引張破壊を生じる状況においては,せん断補強筋の断面減少および降伏点の低下によって,せん断補強筋負担せん断力Vsが低下するとともに,せん断補強筋の付着性能の低下によって,せん断補強筋の役割のうち,せん断ひび割れ幅の拡大を抑制する効果が低下することで,コンクリート負担せん断力Vcが低下すると考えられる. (2)せん断補強筋の引張性能の低下と付着性能の低下を考慮した有限要素解析の結果は,実験結果で得られたせん断耐力の低下挙動と同様の傾向を示した. (3)せん断補強筋が腐食したRCはりで斜め引張破壊が生じる場合において,せん断補強筋の引張性能および付着性能の低下が耐力低下に影響を与えていると仮定したせん断耐力の算定手法を提案し,算定値がおおむね実験結果の傾向を捉えていることがわかった.
|