研究概要 |
少子高齢化を迎えるわが国にあっては, 社会基盤を担う重要な構造形式であるコンクリート構造物の性能の時間的な変化を予測できる技術を確立することが, 持続的な発展を可能とする社会基盤の維持管理においてきわめて重要である. いくつかある劣化機構において, 中性化や塩害に起因するコンクリート構造物中の鉄筋腐食劣化は, RC構造の耐荷性能の根幹を成す鉄筋の断面減少および鉄筋とコンクリートの一体性低下をまねき, 構造物あるいは部材の耐荷性能の低下を引き起こす. 本申請課題では, RC部材の耐荷性能のうちせん断耐荷性能に着目し, 鉄筋の腐食を模擬したRC供試体の載荷実験および耐荷挙動の数値解析的な検討を通じて, 鉄筋腐食が生じたRCた材のせん断耐荷性能の評価手法を提案することを目的とした. 平成20年度では, 圧縮主筋および横拘束筋の腐食を中心的に検討するために, 供試体中の圧縮主筋および横拘束筋の腐食を模擬したRCはり供試体を作製し, 載荷実験を実施した. 以下に, 本研究の範囲内で得られた主な結果を示す. (1) 本申請課題で適用した鉄筋比および横拘束筋比を有するRCはりにおいては, 引張主筋の腐食が複合しない状況ではアーチ耐荷機構の卓越する状況が生まれず, せん断圧縮域の主筋および横拘束筋の腐食がせん断耐荷力に与える影響は小さく, 明確なせん断耐荷性能の変化は見られなかった. (2) 圧縮主筋の腐食を考慮した有限要素解析を実施したが, 実験結果で得られたせん断耐荷挙動を再現するためには, せん断圧縮部の圧縮主筋の腐食にともなう腐食ひび割れのモデル化が必要であることが判明した.
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