研究概要 |
海岸沿いの鉄筋コンクリート構造物には, 波しぶきに伴って塩分が飛来する. この塩分がコンクリート中に浸透することで, 塩害が生じる. これは,鉄筋コンクリート構造物の主たる劣化要因のひとつである. 従来, 既存鉄筋コンクリート構造物に対する点検調査は, 学識者ではなく主として実務者により行われてきた. その結果, 同一の構造物においても, 塩害による劣化速度は部材毎に異なることが知られている. 例えば,Fig.1に示す通り, 海岸沿いの鉄筋コンクリート橋においては, 一般に山側の桁と比較して海側の桁が塩害により激しく劣化すると言われている. ただし, 上記は経験的な知見であり, 研究として整理・評価した事例は少ない. すなわち,構造物周囲の海風の巻き込み現象や雨水による洗浄効果などに着目し, 部材毎の付着塩分量を比較・考察した研究は不足している. 以上の背景を踏まえて本研究では, 海岸部に立地する鉄筋コンクリート橋における上部工の形状が, 飛来塩分の分布量に及ぼす影響を, 上部工底面の凹部への巻き込み現象や上部工側面の雨水による洗浄効果に着目して解明した. その結果, 次のととが明らかになった. 1. 真横から風が吹く場合,海側に近い面において,飛来塩分量は多かった. 2. 上部工底面の凹部にも飛来塩分は巻き込み,付着した. 3. 上記1と2の現象は,10cm程度の供試体では確認されず,一方1m程度の供試体では確認された. 4. 雨水が直接に掛かる面においてのみ,付着塩分は洗浄された.
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