研究概要 |
本年度は,既存のアルミ棒積層体を用いた引抜き試験装置を用いて,土中クリープを模擬するための試験方法について検討を行った。そして,補強材の土中クリープ変形を模擬して引抜き試験を実施し,クリープ変形が生じた場合の補強材周辺のアルミ棒の変位および応力分布について考察した。得られた主な知見は以下の通りである。 (1)クリープ変形に伴う土と補強材の間の相対変位を模擬するために,補強材の引抜き試験を実施する。試験中に補強材および補強材周辺のアルミ棒をデジタルカメラにより撮影する。撮影した画像に基づいて,二次元動態解析ソフトを用いて測点の変位を求め,補強材周辺の変位分布を算定する手法を確立した。 (2)供試体高さの異なる引抜き試験を実施し,供試体端面において実測した鉛直応力に基づいて,補強材からの距離が大きくなるほど鉛直応力は小さくなることを示した。 (3)引抜き試験結果の画像解析に基づいて,アルミ棒積層体の鉛直変位分布から応力分布を予測する手法を確立した。土中クリープを模擬した引抜き試験において,補強材の引抜きに伴う鉛直応力増分は,補強材面上で最大となり,補強材からの距離が大きくなるほど小さくなる。その分布は指数関数で近似することができる。 (4)画像解析に基づいて導いた指数関数を用いて予測した供試体端面における鉛直応力増分の値は,実測値とほぼ一致しており,指数関数近似の精度は比較的高い。
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