研究概要 |
近年,有害物質による地下水・土壌汚染が広く報告されている.地下水中や土壌水中に存在する多くの汚染物質は,地下水の流れにより輸送され地下環境中に拡がることが知られており,汚染の現況評価や修復計画を講ずる上で数値シミュレーションを行う際には,現場の分散長を適切に与えることが重要である.この分散長は,従来の研究において化学性の不均一分布の影響を考慮した分散長として検討されていない.本研究の目的はこの化学的特性の不均一分布まで考慮した分散長について,具体的な現象を調べるとともに分散長の評価方法を確立することである. 本年度は研究実施計画に沿って,まず物理的および化学的不均一性を考慮した水・溶質移動特性を把握するための室内実験を実施した.実験装置は,5x5x10cmの均一ブロックを2次元的に10x10配置し,それぞれのブロック内は同一粒径の試料(土および砂)を充填,実験浸透層全体は5種類の試料を不均一に配置した.不均一性は文献値を参考に,現実味のある透水係数の平均値と分散を与えて統計的な発生方法によった.実験装置にはプリント基板製TDRプローブを設置し,土壌水分および電気伝導度の時間的変化を測定した.実験浸透層には,上部から食紅で着色したKC1溶液を供給した.溶液の供給方法は降雨発生装置による一定のフラックスによるものとした.KC1溶液の見かけの浸透の様子は,所定の時間毎にデジタルカメラによる撮影を実施した.本実験結果については,来年度の地盤工学会や地下水学会などで発表する予定である.実験と平行して反応輸送コードによる実験のモデリングを行った.C1の輸送の時間変化は,デジタルカメラで撮影されたものと類似しており,また下端における破過曲線も概ね実験結果と一致してその妥当性が確認された.研究結果については,来年度の地下水学会などで発表する予定である.
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