海中構造物基礎周辺の洗掘機構の解明を目標に、流動構造および海底地形の時空間変動特性に関する基礎データを得るための(1)室内水理実験および(2)流動構造と底質輸送の数値解析モデルの構築を行なった。 (1)直立円柱周辺の流況・底質輸送・洗掘地形の時空間変動特性に関する実験的解析 一方向流下の砂質地盤上に設置した円柱周辺における底質輸送と洗掘地形の発達過程を詳細に把握するために、一般的な水理量の計測実験および渦流・底質輸送現象の観測実験に加えて、洗掘地形を精密に捉える4組のステレオ画像を用いた3次元画像解析を行った。その結果、洗掘初期段階では馬蹄形渦や縮流の影響による掃流輸送が卓越するものの、側面浸食が進行した中期段階からは後流渦による底質の巻き上げによる浮遊輸送の比率が増大すること、最終的には浸食体積が円柱直径の3乗の約14倍に達する大規模な洗掘孔と約5.5倍のマウンドを持つ洗掘地形が形成されること、洗掘進行中の浸食量に対する堆積量の割合は約0.4〜0.6の範囲で変動すること等、流動構造や底質輸送形態の変化と浸食・堆積量の関係を明らかにすると同時に、現状の解析モデルの改善に役立つ基礎データや知見を見出すことができた。 (2)振動流中の直立円柱周辺の3次元流体場と洗掘に関する数値解析モデルの構築とその適用 移動一般曲線座標表示のNavier-Stokes方程式の流体解析モデルに、掃流砂の輸送量式と底質の体積保存式からなる地形解析モデルと底質の安定条件を考慮した斜面滑動モデルを組み込んで、円柱周辺の振動流場と移動床の連成解析モデルを構築した。その結果、馬蹄形渦や縮流に引起される前面や側面付近の洗掘地形やKC数による最大洗掘深の変化を良好に再現することに成功した。ただし、後流域における浸食・堆積地形の再現性には改善すべき点があり、これに対しては、(1)の実験結果を活用して、浮遊砂輸送の適切なモデル化が不可欠であることが分かった。
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