研究概要 |
まず消波ブロック被覆堤の性能および性能低下を表す指標の選定を行った. 指標としてケーソンの滑動量等を用いることも考えられたが, 性能の低下と被害発生の関係を明確に関連付けるために堤体背後の伝達波高の大きさを用いることにした. 次に, 波浪によるケーソン前面の消波ブロック被覆工の変形と堤体背後の伝達波高の大きさの関係について検討した. 検討は数値波動水路(CADMAS-SURF)を用いて行ったが, あとで用いるライフサイクルコスト算定計算の簡化のため, また他の研究者による実験結果との比較・検証のため, 通常, 静水面付近に生じる消波ブロック被覆工の変形を, 消波ブロック被覆工の天端高さの低下に置き換えてモデル化した. 検計の結果, 消波ブロック被覆工が変形(天端高さが低下)すると, 背後の伝達波高は少しずつではあるが増加することが分かった. これは他の研究者による実験結果の傾向とほぼ一致した. なお, この結果は, 消波ブロック被覆工の変形が大幅な性能低下には結びつかないことも意味している. 最後に, 消波ブロック被覆堤のライフサイクルコストの算定計算を行った. 消波工の変形は提案されている実験式を用い, また背後への伝達波高は上記の結果を踏まえ, 提案されている実験式を用いた. ライフサイクルコストの算定自体は研究初年度の通りであり, 被覆工の補修費用と堤体背後で発生する被害額の和で表し, それぞれ被覆工の侵食面積, および堤体背後の伝達波高に比例する形で表現した. 計算結果からは, 補修基数を厳しくすると堤体の補修費急激に存題する一方, 補修基数を緩やかにしても背後地の被害額の増加はそれほど大きくないこと, また, 被覆工の消波ブロックの質量を小さくすると補修費用は増加するものの, 背後での被害額には大差がないことが分かった.
|