研究概要 |
現在,広く用いられている生息場評価モデルや物質循環モデルは河川環境を水質や生態系上位の魚の生息環境という観点で評価する上ではある程度有効であるが,河川生態系の健全性(多様性)という意味で評価するには不十分である.したがって,河川生態系の健全性は詳細な生物・水質調査から総合的に判断するしかない.このような生物・水質調査の結果は専門の知識を持ったものには理解できるものの,万人に理解できるものはないため,より普遍的で理解しやすい生態系の健全性(多様性)の評価指標が望まれている. 生態系を理解するに当たって,生態系内のエネルギーの流れを捉えることは本質的であり,生態系の健全性を評価する上で最も有効であると考えられる.また,近年では従来のエネルギーという量だけの考え方ではなくエネルギーの質と量を示すエクセルギー(有効エネルギー)が着目されている.そこで,本研究では生態系の健全性を生態系内でのエクセルギーの利用効率という形で定量的に評価する新しい河川生態環境評価法を開発した.この本評価法を現地河川に適用したところ,見た目には明らかな自然区間の瀬と護岸区間の瀬の生態系の健全性の違いを定量的に評価可能であることがわかった.しかし,エクセルギー効率は対象とする期間の設定によってその結果が大きく変わることが予測され,平成20年度には一年間にわたるエクセルギー効率の変動を計測し,より普遍的な評価法の開発を目指す.
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