研究概要 |
本研究では, 海岸侵食を防止する新しい漂砂制御方法を構築するために, 砕波帯での波の進行に伴う浮遊砂の時空間分布や底質の移動に強く影響する底面せん断力の分布特性について検討した. 底面せん断力と浮遊砂濃度の関係を検討する移動床実験, およびk-εモデルによる数値計算を実施した. 底面せん断力と浮遊砂濃度の関係を検討する移動床実験, およびk-εモデルによる数値計算を実施した. 主要な研究成果を以下に示す. (1)砕波瞬時の浮遊砂濃度の分布は, 砕波点から約0.15波長沖側にわたる領域で高濃度の砂が浮遊した. 浮遊砂の高濃度域での底面せん断力は, 他の領域と比較して大きい傾向が顕著である. (2) 底面せん断力と浮遊砂濃度の時間変化は, 水位変動に同調するように変化し, せん断力を水の密度で除した摩擦速度の2乗の物理量τ_0/ρのピークと浮遊砂濃度のピークは, 水位のピークよりも, それぞれ, 位相差t/T〓0.06, 0.1の遅れで現れることが判った. これより, 水位変動に伴いせん断力が発生し, せん断力の発生が砂の浮遊に影響するという一連の過程が判る. (3)浮遊砂濃度の時空間分布は, 底面せん断力と波内部の流れに依存することが判明した. すなわち, 波前脚部より岸側で戻り流れが生じている時刻では, τ_0/ρは小さく, 浮遊砂濃度も低濃度である.波が伝播し, 波峰中心部のでの流速の増加に伴い, 同領域の底面せん断力が増加し, 高濃度の砂が浮遊する. この高濃度域は, 波峰中心部での流速場と同方向に浮遊砂雲を形成しながら, 移流・拡大する. その後, 砕波時には底面せん断力は最大となり, 波前脚部では上昇流により浮遊砂の高濃度域が出現する. 砕波後, 底面せん断力は小さくなり浮遊砂濃度も低下する. (4)1周期平均した浮遊砂濃度の分布は, 底質流動層の存在が確認できた. この底質流動層は砕波点から約0.15波長沖側の領域で高濃度となる. 高濃度の底質流動層の出現範囲には入射波長が支配的であると考えられる.
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