道路交通システムにおける、ドライバーへの個別交通情報提供が実用化されている。個別交通情報提供はドライバーを適切な経路に誘導することが目的の一つであり、各ドライバーの旅行時間の短縮や、ドライバーの効用の最大化を目指している。しかし、実旅行時間情報による経路推奨は、結果として推奨された経路の混雑を招き、道路交通システム全体としての効率を下げてしまい、その結果個人の効用も低下する場合もある。本研究では過年度までに行ったシミュレーション分析の結果をもとに、被験者実験を行い、個別交通情報が与えられた被験者の行動を分析した。具体的な成果は以下の通りである。 1. 室内実験のための実験装置開発 : 人間とエージェントが共存する仮想空間において経路選択実験行うための、多人数同時参加型ネットワーク実験装置を設計、開発を行った。 2. 室内実験 : 60人の被験者による実験を実施。精度によらず、個別情報や全体情報といった情報の与え方によって、情報が行動に及ぼす影響は異なるのかを明らかにすることを目的として分析・考察を行った。既存研究では被験者の情報利用行動には情報の精度が大きく影響することが示されていたが、本室内実験より、情報の限定利用性の存在の有無が被験者の情報利用行動に影響を与えることが示された。具体的には、個別情報と全体情報が同時に与えられた場合、情報の精度にかかわらず、ドライバーは個別に与えられた情報をより優先して利用することが示された。これは情報の限定利用性によるものと考えられる。
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