本研究は、亜熱帯島嶼地域における渇水リスクマネジメントのために、利用者参加型の水資源・利水計画方法論の構築を目的としている。このために、平成19年度には沖縄県内にある全ての離島市町村の水道担当者へのヒアリング調査および水道関係施設の視察を行った。これより、観光による渇水リスクが高い島や海水淡水化によって水道料金が高くなっている島等、島嶼別の問題点を明らかにした。海水淡水化は渇水リスクの軽減につながるが、水道料金を抑えるために一般財源からの繰り入れを行い、町村財政を圧迫している現状や、故障時において本土からの技術者が来るまで対応できない等の問題点も明らかになった。また、1980年以降の島嶼自然・社会環境変化を主成分分析によって示すことにより、全ての離島市町村が観光依存型社会へと移行していることが示された。さらに、一部の市町村の協力により、宿泊施設やダイビングショップ等で使用されている水量を明らかにし、水需要予測で用いられている原単位が沖縄の特に観光化した島嶼地域に適応するには困難であることを示した。特に、座間味島においては、これまで明らかになっていなかった観光客1人あたり使用水量(観光水量)を明確にした。これとダム貯水量等のデータを用いることにより、さらなる観光客の増加といったシナリオに対する給水制限の可能性について分析を行った。このようなアプローチは島嶼観光地における持続可能性について、水資源からその可能性を示すことができる有意義な内容であると言える。
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