19年度は研究の初年度として、過去の非常事態の発生事例の国際物流の視点からの分析、ならびに国際物流サービスのユーザーである荷主の視点から非常事態発生時の対応やニーズについて分析を行った。 過去の事例については阪神淡路大震災ならびに北米における港湾ストライキにおける国際物流の途絶事例に関し、国際物流に関係する主体(荷主、キャリア、インフラ運営主体)の対応について分析し、問題点や課題を明らかにした。 また、筆者らが過去に構築したサプライチェインに関するモデル(世界的な自動車メーカーのサプライチェインを対象とした時系列モデル)を用いて、国際物流サービスの途絶が荷主の国際輸送コストに与える影響について定量的に分析した。その結果、例えば7日間日本の港湾が停止した場合、荷主が生産規模を維持するために航空輸送を利用することで、負担する国際輸送コストは通常時の約3倍にも増加することが明らかとなった。 さらに、荷主企業に対してアンケート調査を行い、事業継続計画の策定状況、事業継続へのロジスティクスにおける対応方策(在庫水準の積み増し、非常時の代替輸送経路の確保、代替物流拠点の確保等)について実態を把握した。 以上の分析を踏まえて、荷主側の非常事態発生時の輸送ニーズについて、時系列的に分析する手法を提案した。具体的には、荷主の平均的な在庫水準から荷主が顧客への納品を停止してよい期間を仮定し、この期間から被災時に荷主が国際輸送需要を復旧させる日数を算定した。この手法により大規模地震をケーススタディとして、地震発生後にどの程度の国際物流需要が発生するか時系列的な試算を行った。 以上の分析結果による考察から、今後荷主企業が事業継続計画を策定・実施するにあたり、港湾等の国際輸送インフラが目指すべきマネジメントの方策について考察を行った。
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