これまで、視覚障害者のためのシステム開発等において、厳密に評価者となる視覚障害者をスクリーニングしている例はほとんどなく、協力が得られる視覚障害者に意見聴取や評価実験に参加してもらっているというのが現状である。 そこで本研究は、視覚障害者用歩行支援システムの開発時あるいは評価等において、被験者となる視覚障害者のスクリーニング方法、評価等に参加協力が得られた視覚障害者の特性を把握する方法を開発することを目的としている。本年度は、昨年度医師による医学的検査を受けた頂いた視覚障害者に対し、簡易的視機能検査および歩行実験、アンケート調査を実施した。実験室内に模擬コースを作成し、視機能と歩行パフォーマンスとの関連性について検証した。本年度得られた成果を以下に示す。 (1)ロービジョン者の歩行に「輝度の変化」、「照度の変化」が影響している事が明らかとなった。障害物との接触やコースからの逸脱などは輝度や照度が低下する事で増加する。その輝度の変化と照度の変化は相乗効果を持ち、ロービジョン者の歩行に影響を与えている。 (2)ロービジョン者にとって負担となる医学的視覚機能計測による「視力」、「視野の損失率」の代わりにアンケートを用いて「視力」、「視野の欠損部分」を調査する事で同程度の歩行能力の推定が可能である。ロービジョン者の個人能力で歩行と関連性が示されている「視力」、「視野」、「コントラスト感度」、「色覚異常」、「音源定位」、「エコー定位」、「路面の検知能力」、「視覚および触覚の重要度」、「白杖使用」、「歩行訓練」の11項目(質問数13問)を調査する事でロービジョン者の歩行能力の簡易推定が可能である事が示された。
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