研究課題
微生物(原虫, 細菌, ウイルスなど)を用いた水処理実験を行う際には、実験に先立ち、対象微生物を培養し、大量のストックソリューションを作成する必要がある。ところが、ノロウイルスは、これまで多くの努力が払われてきたにも関わらず、未だ細胞を用いた培養が確立されておらず、ウイルスの大量培養ならびに添加実験が極めて難しい状況にあるのが現状である。近年、培養不能なノロウイルスの構造や抗原性を調べるため、ウイルス外套タンパク(VLPs : Virus Like Particles)を遺伝子組換え生物を用いて発現させる手法が確立された。また、発現されたVLPsを用いることによりノロウイルスの酵素免疫測定法が開発され、現在では検出キットが市販されるようになった。本研究では、VLPsを用いてノロウイルスの室内水処理実験を行うことを目的とした。遺伝子組換え技術によりノロウイルスVLPsを発現させることに成功した。発現されたVLPsを電子顕微鏡により観察することにより、その形状および大きさ(35.7±3.2nm)が野生のノロウイルス粒子とほぼ同一であることを確認した。この粒子を用い、凝集(PACI)-沈澱-砂ろ過処理における除去性を調べたところ、十分な凝集剤添加条件下(>1.08mg-Al/L)において、2.5〜3log程度の除去が可能であることが示された。また、VLPsの除去率は、同時添加した大腸菌ファージMS2より、大腸菌ファージQβに近かった。このことは、凝集沈澱砂ろ過処理では、大腸菌ファージQβがノロウイルスの指標ウイルスとして使える可能性を示している。本研究では、発現されたノロウイルスVLPsを用いることにより、これまで評価ができていなかったノロウイルスの浄水処理性が評価できることが示された。
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