研究概要 |
LASの汚泥表面への吸着ダイナミクスを明らかにするための検討として,まず,晴天日における生活廃水中のLASの動態を調べた。具体的には,合流式下水道上流部において下水を24時間にわたり採水し,LAS濃度を追跡した。早朝から正午にかけて,溶存態LASの濃度や負荷は9時をピークに著しく増減した。そこで,総LASの組成に基づいてMDS解析を行ったところ,ピーク時付近では,洗濯廃水が日内で最も集中したと判断された。一方,12時から0時にかけて,総LAS組成の遷移が確認されたことや,より高頻度に観測した溶存態LASの濃度や負荷に違いが見られたことから,LASの流下量や組成は,変動していたと言える。これらの検討では,従来から分析例の多い溶存態に加えて,SSに吸着していたLASも分析したが,後者の存在量の方が多いうえに,組成も明らかに異なっていた。したがって,LASの動態を理解するためには,総量に着目する必要があることが見出された。また,総量に着目することで,一人一日あたりLAS排出量は1.2g・p.e^<-1>・day^<-1>と見積もられ,例えば,CSOにともなうリスク評価の観点でも,貴重な知見が得られた。 一方,実験室での検討では,界面活性剤がPAOsやGAOsに及ぼす影響を調べるために,まず,酢酸基質を用いてそれぞれの集積を試みた。特に前者では,その過程において,生物学的リン除去の不安定化要因として,これまで見出されていない知見を得ることができた。それは,GAOsの酢酸摂取活性を特異的に促進する酢酸濃度が存在し,それはPAOsとGAOsの存在量に応じて変化する可能性があることである。現場では,これにLASなどの界面活性剤の汚泥表面への吸着が影響するはずであることから,次年度はこれを総合的に解析する予定である。
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