晴天日における流入下水中のLAS濃度の日内変動を調べたところ、約3倍の差が見られた。住宅地域から排出された生活廃水も含めて解析したところ、LAS濃度のピークが午前中に出現したことや、このときのLAS組成は、市販の洗濯洗剤と似ていたことから、下水中の界面活性剤の主要な起源として、洗濯廃水が考えられた。また、この日内変動にともない、下水処理施設の嫌気槽における汚泥LAS吸着量も変動することが確認された。 そこで、界面活性剤としてLASを含む洗濯洗剤に着目し、嫌気条件におけるPAOsの有機物摂取に及ぼす影響を調べた。長期間にわたり、都市下水に洗濯洗剤を強制添加して、嫌気好気回分式活性汚泥運転を行ったところ、リン放出速度はほとんど変化しなかったが、酢酸摂取速度は低下することが確認された。つまり、PAOsの酢酸摂取効率が悪化することが明らかとなった。一方、LASの嫌気的分解過程を調べたところ、既報では、LASは嫌気条件で分解されにくいと言われているが、分解産物として酢酸を生成することが明らかとなった。また、この酢酸を含めて、前駆物質である一部の有機物(低級脂肪酸以外)が、PAOsのPHA源として利用されていることが明らかとなった。さらに、PAOsのなかには、酢酸は摂取しないが、LASに由来する酢酸以外の有機物を摂取するものが存在する可能性が示された。以上のことから、下水処理施設に流入する洗濯洗剤は、その流入変動にともない、PAOsに対して正と負の影響を及ぼすことが明らかとなった。
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